外注したデザインの意匠権は、自社のもの?他社のもの?意匠権の移転について
その際に問題となるのが意匠権の問題です。そのデザインにかかる意匠権は、受託したデザイナーやデザイン事務所と委託した企業の、どちらのものになるのでしょうか。
意匠権の移転とは
譲渡により意匠権の移転を行う場合は、権利の所在を明確にするために特許庁に「意匠権の移転登録申請」を行うことが必要です。この登録は、第三者への対抗要件にもなっています。
外部デザイナーやデザイン事務所に委託したデザインの意匠権はどうなる?
外部デザイナーやデザイン事務所に商品のデザインを委託した場合、それを手がけたデザイナーに「意匠登録を受ける権利」が、デザイン事務所の経営者に「通常実施権」がそれぞれ自動的に発生します(職務創作)。
委託した企業は、デザイン料を支払えば通常実施権を譲渡してもらうことはできます。しかし意匠登録を受ける権利については、当該デザイナーから譲渡されない限りデザインを依頼した企業が対価を支払ったとしても移転させることができないのです。
そのため、外部デザイナーやデザイン事務所と業務委託契約を結ぶときは、意匠権についてどのような扱いにするのかを契約書に明記しておくことが必要です。
業務委託契約の時点で「意匠登録を受ける権利」が委託者側にあることを明確にしておけば、委託者名義で出願も可能ですし、委託で払う報酬がデザイナーにとって適切であれば問題となる可能性は低いでしょう。
関連意匠に関する意匠権の移転はどうなる?
意匠法上、関連意匠に関する意匠権の移転については本意匠と関連意匠を分離して移転させることができないとされています。本意匠と関連意匠は類似する部分について権利の重複があるからです。
また、本意匠に複数の関連意匠が登録されている場合は、これらを分離すると権利関係が複雑になります。本意匠と関連商標の類似関係を維持するためにも、本意匠と関連意匠を分離して移転させることはできなくなっています。
以上のように、外部デザイナーやデザイン事務所にデザインを委託する場合は、お金さえ払えばすべての権利を譲渡してもらえるわけではありません。外注したデザインには「意匠登録を受ける権利」と「通常実施権」が存在することをしっかり理解した上で、依頼をする必要があるでしょう。