生成AIで作ったデザインは意匠登録できるのか
生成AIでデザイン案を出す、という進め方が普通になってきました。実際に「AIに出させた形をそのまま製品化したいのですが、意匠登録できますか」というご相談も届くようになっています。
結論から言うと、「登録できます。ただし条件があります。」となります。
1.創作者になれるのは人間だけ
意匠登録出願の願書には、創作者の氏名を書く欄があります。ここに書けるのは自然人、つまり人間だけです。AIの名前を書くことはできません。
この点は特許の分野で実際に争われました。AIを発明者として記載した特許出願が特許庁に却下され、その処分の適法性が裁判で問われた事件です。一審の東京地裁、二審の知財高裁ともに「発明者は自然人に限られる」と判断し、2026年3月、最高裁が上告を受理しない決定をしたことで確定しました。
意匠法も「意匠の創作をした者」が意匠登録を受けることができると定めており、構造は同じです。AIを創作者とする出願は通りません。
ただし、大事なことですがここをしっかり理解してほしいです。禁止されているのは「AIを創作者として記載すること」であって、「AIを使って作ったデザインを登録すること」ではありません。
2.誰が創作者になるのか
判断の軸は、そのデザインの創作に人間がどれだけ実質的に関与したかとなります。
・AIを道具として使い、人がコンセプトを与え、出力を選び、修正を加えた → その人が創作者
・AIが出した案を人が検証し、形を練り直した → その人が創作者
・人の関与がなく、AIが完全に自律的に生成した → 現行制度では創作者が存在しないことになり、基本的には不可
実務では、ほとんどのケースが上の2つに当てはまります。プロンプトを工夫し、何十枚も出させた中から選び、比率や形状を調整して製品に落とし込む——この過程には人間の判断が何重にも入っています。
3.記録を残しておく
将来、創作者が誰かを問われたときのために、過程を残しておくことをお勧めします。
・どのような指示(プロンプト)を出したか
・生成された候補のうち、何を、どういう理由で選んだか
・そこからどう修正したか
・それぞれの日付
デザインを外注している場合は、外注先がAIを使ったかどうかも確認しておいたほうがよいでしょう。契約書にAI利用の申告条項を入れておく企業も増えています。
4.AIを使うときに特に注意したいこと
(1)生成した画像をそのまま公開しない
意匠は新規性が命です。SNSに投稿する、クラウドファンディングで先行公開する、といった行為で新規性を失います。AIで大量に案が出ると、社内の共有感覚のまま外に出してしまいがちです。出願前の公開には気をつけてください。
(例外規定はありますが、使わずに済むならそれに越したことはありません。この点は「一度公開したデザインでも、意匠登録はできますか?」のコラムをご覧ください。)
(2)既存のデザインに似ることがある
生成AIは既存のデザインを学習しています。出力が、他人が既に登録している意匠と似てしまう可能性は、人が一から描く場合より高いと考えたほうがよいでしょう。
これは2つの意味で問題になります。ひとつは自分の出願が拒絶されること。もうひとつは、気づかずに他人の意匠権を侵害してしまうことです。後者のほうが深刻です。
AIで作ったデザインこそ、先行意匠調査をしてから世に出すべきだと考えています。
そして、そのような意匠についてAIに調査させると元となるデザインを直ぐに見つけてくれるという状況が最近頻繁に生じています。
さすがAIだけに、AIの考えることはよく理解出来るのだなと笑ってしまいます。
なお、元となるデザインが見つかったとしても非類似であれば問題ありません。
(3)AI画像はそのままでは出願図面にならない
これは実務上、最もつまずくところです。
意匠登録出願では、正面図・背面図・左右側面図・平面図・底面図といった図面(または写真)を提出し、それらが互いに矛盾なく同一の立体を表している必要があります。
ところが生成AIの画像は、正面から見た形と側面から見た形が食い違っていることが普通にあります。見た目は魅力的でも、立体として成立していないのです。そのまま提出しても補正指令が出ますし、そもそも権利範囲が定まりません。
AIで作った案を出願するには、その形をCADなり実物なりに起こし直し、整合の取れた図面を作成する工程が必要になります。ここは省略できません。
AIに意匠図面を作って貰おうと思っても現段階(2026年8月現在)ではまともな図面になった試しはありません。
(4)制度は変わるかもしれない
裁判所は、現行法がAIの自律的な創作を想定して作られていない点に触れ、この問題は立法で解決されるべきだと述べています。国の知的財産推進計画でも検討課題に挙がっており、今後の法改正で扱いが変わる可能性はあります。
とはいえ、当面は「人が関与し、人が創作者として名を連ねる」という前提で進めることになります。
5.まとめ
生成AIを使ったデザインでも意匠登録はできます。押さえるべきは3点です。
(1)創作者欄に書けるのは人間だけ。AIはあくまで道具
(2)公開前に出願する。生成物をうっかり外に出さない
(3)出願用の図面は作り直しが必要。AI画像はそのまま使えない
AIで作ったデザインの権利化について迷われている方は、公開する前の段階でご相談ください。

















